更年期障害というと、女性特有の問題と考えている人が多いです。しかし実際には、更年期障害は男性にも起こることがあります。

男性も女性と同じように、加齢に伴って男性機能(生殖機能)をはじめとした、身体的・精神的な問題が出現します。それらが目立って現れ始めるのが、中高年と呼ばれる年齢です。

多くの人は、「女性の更年期障害ではのぼせ、ほてり、多汗などのさまざまな心身の不調が出現する」ことを知っています。

しかし、女性と同じように男性にも、原因不明で起こる「不定愁訴(ふていしゅうそ:原因がはっきりしない訴え)」と呼ばれる症状が出現します。このような状態は男性更年期障害と呼ばれます。

こうした男性の更年期障害を防ぐためには、まずは男性更年期障害で生じる症状や原因を把握しておく必要があります。そこで、「男性更年期に起こる問題と原因」について解説します。

男性更年期に起こる問題

女性と同じように男性であっても、中高年と呼ばれる年代になると、さまざまな心身の不調が現れやすくなります。例えば、「疲れやすくなった」「疲労が回復しにくくなった」などは、多くの中高年男性がもつ悩みだと思います。

そして、このような問題のほとんどは、「年のせい」とされて諦められてしまいます。

その他にも、肩周りや背中周辺のだるさや、めまい、ほてり、のぼせ、多汗といった、女性に起こる更年期障害と同じような症状に悩まされている人も少なくありません。

また、更年期の男性に起こる問題で最も重大なのはED(勃起不全)です。ED(勃起不全)は人によって現れる症状が異なり、「朝立ちしなくなった」「セックスしても腟内で射精ができない」「セックス中に中折れする」などがよく訴えられます。

このような精力の低下は、中高年男性の多くが理解しているものです。

しかし、男性の更年期に起こる症状は、このような「疲れやすさ」「倦怠感」「男性機能(生殖機能)」といった身体機能の問題ばかりではありません。

男性更年期では集中力の低下やイライラ感、うつ状態などの精神的な症状が出現することも少なくありません。男性更年期障害では、倦怠感やED(勃起不全)といった身体機能だけではなく、集中力の低下やうつ状態などの精神的な問題が現れやすいことも理解しておく必要があります。

男性更年期障害の原因

女性に起こる更年期障害に「閉経に伴うホルモンバランスの崩れ(女性ホルモンの減少)が大きく影響している」ことは、多くの人が知っています。これと同じように、男性更年期障害も男性ホルモンであるテストステロンが加齢に伴って少なくなることが原因だとされています。

テストステロンには、「筋肉を大きくする」「造血作用」「抗動脈硬化作用」「生殖機能亢進作用」など多くの役割があります。また、冒険心や競争心を高めるという精神面にも影響することがわかっています。

男性更年期には、このような役割を持つテストステロンの分泌が低下するため、さまざまな症状が出現すると考えられています。

ホルモンによって勃起が起こる

それでは、どのようにして男性更年期障害の症状が起こるようになるのでしょうか。男性更年期障害の中でも精力の低下は大きな問題になります。

ホルモンの問題で男性機能が低下すると、勃起が起こらなくなったり、勃起する頻度が少なくなったりします。つまり、ED(勃起不全)に陥るのです。

例えば、朝立ちにはホルモンバランスが重要です。性的な刺激が勃起を引き起こすことは、多くの人が知っています。また、睡眠中にも勃起がリズム的に起こっていることがわかっています。

人が眠っているとき、浅い眠りである「レム睡眠」と深く眠っている「ノンレム睡眠」を繰り返します。レム睡眠とノンレム睡眠のリズムが4~5回繰り返すことで目が覚めます。実は、こうした睡眠のリズムは勃起を引き起こす刺激になります。

具体的には、浅い眠りであるレム睡眠時に勃起が起こっています。つまり、男性は眠っている間に無意識に勃起を繰り返しています。そして、レム睡眠時に目覚めると「朝立ち」をしている状態で起きることになります。

ホルモンのバランスが崩れる男性更年期障害では、このような睡眠リズムに伴う勃起も無くなるため、朝立ちが起こらなくなります。

また他にも、「セックス中に勃起が持続できなくなる(中折れ)」「射精しにくくなる」「早く射精しすぎる」など、さまざまな男性機能(生殖機能)の問題が現れます。

このように、男性ホルモンであるテストステロンの分泌低下は精力の変化を引き起こし、下半身の元気がなくなっていくようになります。

テストステロンと勃起の関係性

それでは、なぜテストステロンが勃起に重要なのでしょうか。これを理解するためには、勃起のメカニズムを学ぶ必要があります。

勃起の過程は、性的刺激が脳に加わることから始まります。性的刺激は大脳を刺激して「性欲」を作ります。十分な勃起には、性的刺激だけでなく性欲が欠かせません。このとき、性欲をコントロールしているのはテストステロンです。

脳に加わった刺激は、大脳を興奮させます。大脳から生じた指令は背骨の中にある脊髄(せきずい)を通じて、腰の部分に存在する「勃起中枢」に伝わります。その後、勃起中枢から、ペニスの血管と神経に「血管を広げさせる」ための情報が送られます。その結果、ペニスに大量の血液が流れることで勃起が起こります。

テストステロンは大脳で性欲を作るだけでなく、直接ペニスの血管や神経に作用してペニスへの血流を促す働きがあります。

このように、テストステロンは、「脳に働きかけて性欲をコントロールする」「ペニスの血管と神経に働きかけてペニスへの血流を促す」という2つの役割によって、勃起を引き起こします。

中高年の男性では、こうしたテストステロンの作用が低下することで、さまざまな男性機能の変化が生じます。

男性更年期障害で重要となるセロトニン

しかし実際には、男性更年期障害の症状は、テストステロンの分泌量が低下することだけで起こっているのではありません。これらさまざまな不定愁訴が現れる背景には、いくつかの原因があります。

そのうちの1つが、脳内で情報伝達の役割を担っている「セロトニン」と呼ばれる神経伝達物質が減ることです。セロトニンの量が少なくなると、うつ状態に陥りやすくなります。

さらに更年期には、前頭葉と呼ばれる脳の前方部分が萎縮し始めます。前頭葉では理性や意欲、好奇心といったものに関与しています。そのため前頭葉に問題が生じると、イライラしたり、意欲の減退などが起こったりします。

男性更年期障害が起こる年代には、「テストステロンの分泌低下」「セロトニンの合成減少」「前頭葉の萎縮」という複数の問題が重なって起こります。そのため、ED(勃起不全)や倦怠感といった身体的症状だけでなく、集中力の低下やうつ状態などの精神的症状も出現することになります。

セロトニンや前頭葉が男性更年期障害にどう関与しているのか

男性更年期障害の原因は、一般的には男性ホルモンである「テストステロン」の分泌が低下することだと考えられています。しかし実際には、男性更年期障害は、ホルモンバランスの変化だけではなく、脳内ホルモンである「セロトニン」の合成低下や、加齢による脳の「前頭葉」の萎縮やも関係しています

テストステロンやセロトニン、前頭葉の働きをまとめると、以下のようになります。

テストステロン セロトニン 前頭葉

・ひげ、恥毛の発育

・性機能促進

・筋肉、骨の形成

・代謝促進

・抗動脈硬化

・造血

・やる気を上げる

・精神を安定させる

・良質の眠りを導く

・意欲を高める

・好奇心を高める

・理性を保つ

男性更年期障害では、これらの作用が低下することでさまざまな症状が出現します。具体的には、テストステロンの分泌低下で身体的な症状が出現し、前頭葉の萎縮とセロトニンの合成が悪くなることで精神的症状が現れます。

ED(勃起不全)などにテストステロンが関わっていることは既に述べましたが、これは体に表れる身体的な特徴です。一方でうつ症状や無気力感などは体に症状が分かりやすく表れるというものではなく、あくまでも心理的な要因です。

以下に、男性更年期障害で出現する症状を身体的症状と精神的症状に分けてまとめます。

身体的症状 精神的症状
・ED(勃起不全)

・筋力低下

・筋肉痛

・疲労感

・動悸、高血圧

・ほてり

・発汗

・頭痛

・めまい、耳鳴り

・頻尿

・不眠

・集中力の低下

・うつ状態

・無気力

・イライラ

・不安

・記憶力低下

・性欲減退

男性更年期障害では身体的症状だけではなく、精神的症状も出現します。このように多彩な問題が現れることで、男性更年期障害は中高年男性を悩ませることになります。

ホルモンバランスが崩れると自律神経症状が起こる

ED(勃起不全)やうつ症状、疲労などの症状が出てくる理由や原因については理解できたと思います。ただ、男性更年期障害では他にも動悸・高血圧やめまい、頻尿など、さまざまな症状が表れるようになります。

自律神経は「心臓を動かす」「排尿する」「汗をかく」など生命維持に関わる働きをしている神経です。これら自律神経は「自分の意識でコントロールできない神経」でもあります。

実際、心臓に対して「心拍数を早くしろ!」といくら頭で命令しても心拍数は早くなりません。心拍数を早めるためには、ジョギングするなど体を動かす必要があります。そうすれば、無意識に心臓の鼓動は早くなります。

ただ、テストステロンの分泌が悪くなると自律神経のバランスが崩れ、自律神経失調症のようになります。自律神経が「心臓の鼓動」「排尿」「発汗」などに関与していることから、このバランスが崩れるのです。

心臓の鼓動は血圧に関与しており、このバランスが崩れると高血圧になったり動悸(心拍数が異常に多い)を起こしたりします。また、これらの作用によって体のほてりやめまい・耳鳴りを生じるようになります。さらには脳血管が拡張されることで頭痛を生じるため、頭痛が起こりやすくなります。

排尿や睡眠も自律神経が支配しているため、トイレが近くなって頻尿が起こったり、不眠症状が表れたりします。

当然、こうした身体的な特徴を生じるようになると、強い疲労を感じるようになります。また、こうした症状が積み重なるとうつ病や不安症状、記憶力の低下など精神症状まで発展することがよくあります。

女性の更年期障害で生じる「自律神経失調症のような症状」は男性でも起こります。テストステロンを起点として、さまざまな体の不調が表れるようになるのです。

テストステロン以外でも身体的症状が起こる

このように、男性ホルモンの働きが悪いと結果として自律神経のバランスが崩れ、それに伴って症状が表れてきます。ただ、筋肉痛や筋力低下などはテストステロンとは異なる働きによって症状を生じるようになります。

人が年を取ると、運動した後の筋肉痛が遅れて出てくるようになることは有名です。また、運動不足の人が急に運動を行うと筋肉痛になることも、一般的に知られています。

男性更年期障害の症状である筋肉痛は、特に運動もしていないのに、朝起きたときに首や背中、腰、太ももなどに出現します。

男性更年期障害のメカニズムを解説してきましたが、「なぜテストステロンの分泌が低下すると筋肉痛が生じるのか?」という疑問を抱く人は多いと思います。既に述べた「テストステロン」だけの作用を見ると、テストステロンは筋肉痛には関係しないような印象を受けます。

実は、男性更年期障害に起こる筋肉痛は、テストステロンではなく成長ホルモンの作用が低下することが原因で起こります。中高年といわれる年代では、テストステロンだけではなく成長ホルモンも減少します。

そのメカニズムは、成長ホルモンの分泌が悪くなることで、成長ホルモンの作用である「筋肉の合成」が障害されることから始まります。

通常、人間の体における筋肉は常に合成と分解を繰り返しています。健康な場合、このような筋肉の合成と分解のバランスが保たれています。また、「筋肉が作られる量」が「壊される量」を超えると筋肉は大きくなり、逆に筋肉の分解量が多くなると筋肉は衰えます。

このとき、成長ホルモンが少なくなって分解された筋肉が再生されなくなると、働きが悪くなる部分が筋肉内に出てきます。このように機能しなくなった筋肉は硬くなり、いわゆる「コリ」のような状態になります

男性更年期障害では、こうして作られた「コリ」が原因で筋肉痛や痙攣(けいれん)などが起こります。

男性は中高年になると、テストステロンだけでなく成長ホルモンの分泌も悪くなります。これにより、一度破壊された筋肉の再生が阻害されてしまいます。その結果、壊れて正常に機能しなくなった筋肉が「コリ」となってしまうため、男性更年期障害では筋肉痛が生じます。

男性更年期障害の原因を知る

男性更年期障害の主な原因は「テストステロンの分泌低下」です。それに加えて、「前頭葉の萎縮」「セロトニンの合成低下」なども起こります。ただ、実際にはこれだけでなく、他にもさまざまな体の変化が起こって男性更年期障害を作り出しています。

男性更年期障害ではテストステロンだけがクローズアップされがちです。

ただ、実際にはテストステロンの減少を起点として、ホルモンバランス全体が崩れたり自律神経が乱れたりするのです。その結果、勃起障害に限らず筋肉痛やうつ症状、疲労、不眠などさまざまな症状が表れるようになります。

これら男性更年期障害の特徴を理解しておくと、原因がはっきりしないような症状が出現しても慌てることなく対応できるようになります。

例えば、年齢が高くなってうつ症状や集中力の低下が現れたとしても、それはいわゆる「うつ病」ではない可能性があります。男性更年期障害による症状であり、抗うつ薬を飲むのではなく、男性ホルモンの働きを高めるようにすれば症状改善することはよくあります。

原因不明の不調が表れたとき、男性である程度の年齢にある人は男性更年期障害を疑ってみましょう。男性であればだれでも生じる可能性のある病気ですが、早めに対処すればED(勃起不全)に限らずあらゆる症状を取り去れるようになります。