ED(勃起不全:インポテンツ)は世の中にいる多くの男性が悩まされている病気です。日本人も50歳以上になると半数近くの人がEDになるといわれています。

そのようなEDですが、多くの場合は生活習慣などの問題が原因で起こります。つまり、EDはその人の心がけ次第で予防できる病気であるといえます。ただ多くの人はそのことを知らないため、EDに悩まされることになります。

そこで今回は、EDと深く関係している生活習慣の一つであるタバコの害について解説します。

喫煙とED(勃起不全)の関係

タバコが体の健康にとって良くないということは、誰もが知っていることです。これは男性機能(生殖機能)に関しても同様であり、喫煙はEDを引き起こす原因になります

日本性機能学会のガイドライン(医師が診察するときの指標)には、喫煙が勃起不全のリスクになると明記されています。タバコを吸うことで勃ちにくくなるのは、どの医師であっても共通の認識なのです。

そのため、禁煙はそれだけで勃起障害を改善させる作用があります。もちろん、完全に勃たなくなった状態(インポテンツ)から10代のころのようにギンギンになることは無理です。ただ、それでも長期の禁煙によってEDの症状が緩和されるのです。

それでは、実際のところ喫煙は勃起障害にどれだけ影響を与えるのでしょうか。1日に吸うタバコの本数が多くなるほど、当然ながら勃起不全を引き起こす確率が高まります。このときの研究調査では、以下のような結果が報告されています。

He, J. et al.:Am J Epidemiol 166(7):803, 2007

この研究は中国人男性7,684人を対象に行った疫学調査ですが、非喫煙者(1日に吸うタバコ本数0本)の人に比べて、1日21本吸う人であれば、EDリスクが非喫煙者に比べて1.65倍上昇することが分かっています。

上記の研究では、勃起障害を生じている男性のうち22.7%はタバコによる喫煙が原因だと推測されています。それだけ、タバコによる影響は大きいのです。

タバコの有害物質が勃起不全を引き起こす

それでは、なぜ喫煙によって勃起障害を生じるようになるのでしょうか。これは、タバコに含まれる有害物質が深く関係しています。

タバコの有害物質としては主に2つ知られており、それぞれがペニスに対して悪影響を及ぼします。この2つとしては、以下のものがあります。

・ニコチン

・一酸化炭素

それでは、有害物質がどのような作用をもたらすのかについて順に確認していきます。

ニコチンによるED(勃起不全)

タバコによる依存性はニコチンが大きく影響しているとされています。ニコチンは麻薬と同じように脳を快楽状態にさせ、これが結果として依存性を生じさせるのです。

それでは、ニコチンによってなぜ勃起障害が引き起こされるのかというと、これには血管収縮や交感神経の興奮が関係しています。

・血管収縮によって勃ちにくくなる

なぜ勃起するのかというと、これにはペニスの血管が大きく関係しています。ペニスはスポンジ状となっており、勃起していない通常の状態であるとスカスカになっています。ただ、性的興奮が伝わってくるとペニスのスポンジ部分に多くの血液が流れ込むようになり、結果として硬くなります。

つまり、勃起するときには「どれだけ血流の状態が良好なのか」が重要になります。

ただ、タバコに含まれるニコチンが血管に作用すると、血流量が減ってしまいます。これは、ニコチンが血管に働きかけることで血管を収縮させるからです。

「血管が収縮する」とは、血管が細くなることを意味しています。血管が細いと、それだけ血流が流れにくくなります。つまり、血流量が減少して勃起しにくくなるのです。

血管の中でも、勃起に関わるチンコの血管は細い部類に入ります。そのためニコチンの影響を受けやすく、結果としてEDを生じるようになるのです。タバコを吸っていると硬さが足りなかったり中折れしやすくなったりするのは、こうした理由があります。

・交感神経を刺激する

さらに、ニコチンは性的興奮が伝わりにくくする作用があります。これは、ニコチンが交感神経を刺激するからです。

交感神経とは、体が緊張したときに活発になります。運動時や強いストレスを受けているときなど、体が緊張すると勃起しにくくなります。心因的なストレスによってインポテンツや中折れしてしまうことは広く知られていますが、これには体の緊張による「交感神経の刺激」があるのです。

ニコチンも同じように交感神経の働きを活発にさせるため、結果として勃起しにくくさせるのです。

ペニスが勃起するとき、体をリラックスさせた方が勃ちやすくなります。緊張時とは真逆のリラックス時では、副交感神経という神経が活発に働いていますが、リラックス状態では性的興奮が伝わりやすくなります。

しかし、ニコチンは体を強制的に緊張状態にするために性的興奮が伝わりにくくなります。

一酸化炭素によるED(勃起不全)

タバコには一酸化炭素が含まれていることも大きな問題です。私たちの細胞には酸素が必要であり、酸素を運ぶときに赤血球が活躍します。赤血球に存在するヘモグロビンと酸素が結びつくことにより、細胞に酸素を送り届けることができるようになっています。

ただ、一酸化炭素は酸素より250倍以上も強力にヘモグロビンと結びつきます。一酸化炭素とヘモグロビンが結びつくと、ヘモグロビンは酸素と結合できなくなります。その結果、全身に酸素が行きわたらなくなります。

一酸化炭素によって酸素欠乏を起こすのですが、この影響はペニスにも表れます。チンコに刺激を加えて勃起させるとき、酸素欠乏の状態であると勃起がうまくいかなくなります。

タバコを吸っていると、常に酸素欠乏の状態になります。当然、タバコを吸う本数が多くなるほどペニスに影響が出て勃起・朝立ちが難しかったり、中折れしやすくなったりするのです。

喫煙によって活性酸素が生まれ、動脈硬化が進行する

そして、タバコにはタールが含まれています。タールとは、タバコに含まれている黒いネバネバした物体のことです。タールには発がん物質が多く含まれており、健康に対して悪影響を及ぼします。他にも、ヒ素やカドミウム、ダイオキシンなどさまざまな有害物質が存在します。

ニコチンや一酸化炭素に加え、これらタールなどの物質は体を「酸化」させる作用をもっています。酸化とは、ある物質に酸素が結合することを意味します。代表的な酸化の例として、鉄の錆びが挙げられます。鉄の錆びは、鉄に酸素が付くために起こるものです。

このような酸化は、体の細胞にも起こります。そして酸化した細胞は、働きが悪くなり本来の役割を果たせなくなります。このような細胞の酸化は、老化やがんなどと関係していることがわかっています。

喫煙による酸化ストレスは、勃起障害だけでなく精子の機能にも影響します。要は、タバコの有害物質が精子のDNAも傷つけるのです。DNAが損傷されると精子の働きは弱くなってしまい、卵子にたどり着いても受精しにくくなったり、受精して妊娠しても流産しやすくなったりします。

また、タバコはそのような酸化ストレスの影響だけではなく、精子の数を減らすことも明らかになっています。このように喫煙することは、男性機能(生殖機能)にとって「百害あって一利なし」だといえます。

活性酸素と男性機能(生殖機能)の関係性

先ほど喫煙による酸化には活性酸素が関わっています。がんや膠原病(こうげんびょう)など、活性酸素はさまざまな病気と関係していることがわかっています。そして、中高年の男性機能(生殖低下)にも活性酸素は悪影響を与えています。

活性酸素とは、「酸素が変形して、細胞に対して障害させる作用をもつ物質」の総称です。つまり、他の分子に結合したり、細胞自体を傷つけたり(酸化)するような作用があります。活性酸素の種類には、主に以下の4種類が当てはまります。

・スーパーオキシド

・ヒドロキシラジカル

・過酸化水素

・一重項酸素

このような活性酸素は細胞内のDNAを損傷する作用があるため、さまざまな病気に関係しているといわれています。

通常では、体内にある酵素によって活性酸素が分解されるため、余分な活性酸素が発生することはありません。しかし、酵素が不足していたり過剰に活性酸素が生み出されたりしている場合は、活性酸素によって体内のさまざまな細胞が損傷されます

タバコを吸っている人の場合、体内で活性酸素が大量に発生するようになります。

そして、活性酸素が原因で起こる病気には、生活習慣病や老化、がんなど、いわゆる原因がはっきりしておらず、治療が困難になるものが多くあります。そのこともあって、活性酸素は体にとって毒性が高いです。

また、活性酸素は動脈を傷つけることで動脈硬化を引き起こします。動脈が硬くなって弾力が失われると、その分だけ血流が滞ります。ペニスの血管は心臓や脳などの血管に比べて非常に細く、動脈硬化による影響を受けやすいです。

タバコの有害物質によって活性酸素が生まれ、ペニスの血管が障害されると勃ちにくくなります。こうして、中折れや勃起障害、朝立ちがないなどEDが引き起こされます。

活性酸素はビタミンを消費する

さらに、活性酸素はビタミンを大量に消費します。ビタミンの中には、ビタミンCやビタミンEなど「抗酸化ビタミン」と呼ばれるものが存在します。喫煙により、これらのビタミンが消費されるのです。

ビタミンCやビタミンEなどは「酸化に抵抗するビタミン(酸化から体を守ってくれるビタミン)」であるため、抗酸化ビタミンという名前になっています。活性酸素が存在すると、強い酸化力によって抗酸化ビタミンを消費していきます。

例えば一本の喫煙により、ビタミンCが25~100mg消費されるといわれています。成人男性の場合、1日に必要なビタミンCの量は約100mgです。そのため、1日4本のタバコを吸っている人では、それだけでビタミンCが足りていない状態に陥ります。

これと同じことはビタミンEにも起こります。ビタミン類が足りていないと、当然ながら体に不調が起こります。こうした不調が結果として勃起障害に結びつくのです。

禁煙が難しい場合はどのように対処すればいいのか

このように喫煙が勃起不全に関わることから、禁煙をすればそれだけでEDから治ったという人がいます。禁煙というのは、ED回復に大きく貢献するのです。中折れが解消したり、朝立ちが復活したりします。

ただ、いくら禁煙が健康にもED解消にも効果があるとわかっていたとしても、なかなか禁煙を実行できない人は多いです。そこで、禁煙が困難な人ではどのようにしてEDと向き合えばいいのかについて確認していきます。

減煙はED回復に効果的

完全に禁煙することが難しいとしても、減煙によってもインポテンツから回復することができます。

喫煙量が多いとそれだけニコチン、一酸化炭素、タールなどの有害物質が体の中に取り込まれ、活性酸素が発生してペニスの血管に障害を与えるようになります。そのため、減煙でタバコ量が少なくなることは勃起不全からの回復に効果があるのです。

冒頭では「1日に吸うタバコの本数が多くなるほど、勃起不全を引き起こす確率が高まる」ことを示しましたが、これと同じようにタバコを吸う量が少なくなるとペニスに対して良い影響があります。

禁煙補助剤を用いる

ただ、減煙をすれば勃起力の回復に効果があると分かっていても、減煙すら難しいことがあります。その場合、医療機関の禁煙外来を受診して禁煙補助剤を活用するという方法もあります。

地元の内科を受診すれば、どの病院・クリニックであっても禁煙外来を設けているはずです。そのため、家の近くにある医療機関を受診すれば問題ありません。

例えば、禁煙補助剤としてはチャンピックス(一般名:バレニクリン)が有名です。チャンピックスは12週間(約3ヵ月)ほど服用することができ、薬を活用することでタバコの量を減らしていき、最終的には禁煙までもっていきます。

ただ、完全に禁煙ができなかったとしても、こうした薬を活用して減煙できればそれだけで勃起不全からの回復に効果的だといえます。

アイコス(iQOS)を活用する

火を使わないのでタバコから煙が出ず、副流煙などニオイの問題がないものとしてアイコス(iQOS)があります。火によってタバコを燃やすのではなく、アイコスでは加熱によってタバコを吸います。

アイコスを活用しても、ニコチンや一酸化炭素などの有害物質は体の中に入っていきます。ただ、燃やすわけではないので「タールなど、火で燃やしたときに発生する有害物質を大幅にカットできる」という利点があります。

たとえアイコスを活用したとしても、ニコチンや一酸化炭素を取り除くことができないので、EDに悪影響があることは変わりがないです。ただ、有害物質を減らすことによって、喫煙による勃起障害への影響を軽減してくれるようになります。

周囲に対して副流煙による臭いがないだけでなく、タバコによる勃起障害への影響を少しでも減らしてくれるのがアイコスです。ただ、基本は禁煙や減煙によって喫煙量を少なくすることが最もED回復に効果的であることは理解しなければいけません。

精力剤に頼る

タバコを吸うのであれば、「ビタミンCやビタミンEを含むフルーツを食事に取り入れる」「食事内容を改善する」などを実践するといいですが、現実的にはなかなか難しいです。そこで、禁煙できない場合は精力剤など「他のものに頼る」ことも有効です。

もちろん、精力剤だけで喫煙による害を回避することはできません。ただ、何も対策をしないよりは精力剤を活用し、勃起力や持続力を保つようにした方がいいということです。

精力剤としては多くの種類があり、値段もさまざまなので自分にあったものを選んで使用するといいです。

ここまで、タバコが勃起障害につながる理由や影響について解説してきました。喫煙がEDと関係があることは多くの研究データから明らかであり、禁煙することは非常に有効なED回復法だといえます。

タバコに含まれる有害物質の影響を少しでも減らすようにすれば、それだけで勃起力が回復し、勃起障害や中折れ、朝立ち不全などを解消できるようになります。

しかし、現実的に禁煙が難しい人もいます。そうした場合、「何とか減煙できないか考える」「精力剤を試す」など他の対策を考えて実行するようにしましょう。