大半の場合、日本における不妊は女性側に原因があると考えられています。しかし実際には、不妊原因の半数は男性側にあります。

また、子作りを行っていないような人にとって不妊という問題は、あまり意識もしないことだと思います。しかし実際に子供を作ろうと思ったり、周りに話を聞いてみたりしたとき、不妊に悩んでいる人たちが多く存在していることに気づきます。

そして、一定期間経っても妊娠が認められない場合、不妊に悩むカップルは不妊外来を訪れることになります。

ただ不妊外来に行っても、治療によって全ての人が妊娠できるわけではありません。また、「不妊外来で検査をしても異常がないのに子供ができない」という人は多いです。

なぜ、こうした事態が起こるのでしょうか。ここでは、女性だけでなく男性側が原因で生じる不妊についても確認していきます。

妊娠のしやすさを確認する不妊外来

子作りを意識するようになると、「想像以上に不妊で悩んでいる人が多い」ということに気づきます。

独身の人や結婚していても妊活(妊娠活動)を行っていないような人にとっては、「妊活さえすれば子供をすぐに授かることができる」という程度の認識である場合が多いです。しかし実際に妊活をしてみると、「思ったように子供を授からない」と悩む人は多いです。

そのような場合、大半のカップルは産婦人科で女性側の不妊検査を受けます。そこでは検査するなど、妊娠するための治療が開始されます。

不妊外来での検査内容

それでは、不妊外来ではどのような検査を受けるのでしょうか。女性と男性で異なりますが、それぞれの検査項目から確認していきます。

・基礎検査

まず、女性側からです。

婦人科を含め、医療機関を受診すると問診などから始まり、超音波検査やホルモン検査、血液検査などを実施します。

超音波検査では子宮・卵巣の様子を確認し、子宮筋腫などの病気があるかどうかを確認します。子宮筋腫が不妊の原因になることがあるため、最初に検査を実施するのです。

ホルモン検査についても、血液中の女性ホルモン濃度を確認することで排卵障害などがあるかどうかをチェックします。

・基礎体温検査

女性は生理周期によって基礎体温の変動があることは広く知られています。そこで、基礎体温を測ることで卵巣の働きを確認します。

・卵管造影検査

子宮腔へ造影剤を入れ、卵管(卵子が通るための道)に詰まりがないかどうかを確認するための検査であり、場合によっては痛みを伴います。

ただ、卵管造影検査を実施した後は卵管の通りがよくなることから、半年間ほどは妊娠率がアップします。卵管造影検査後の半年間をゴールデン期間と呼び、この期間中に妊娠した人はたくさんいます。

一方で、女性側に不妊の原因が見つからない場合は、男性側の検査を行うことになります。男性側に原因が見つかれば、男性が治療をすることで妊娠する可能性が高くなります。

・精液検査

精液検査で確認できるのは、「精子の数、濃度、運動率、形状」などです。精子は卵巣の中で99%以上が死滅し、何億という精子の中でわずかに生き残った精子が卵子と受精することができます。

そのため、濃度が薄かったり、精子の運動率や形状が悪かったりすると受精することができません。

しかし、中には精液検査や超音波検査、ホルモン検査、卵巣造影検査といったような細かい検査を行っても異常が見つからない場合があります。

つまり、「夫婦ともに異常がなく、定期的にセックスを行っているのに妊娠しない」というケースがあります。

このような場合、「夫婦の身体的な相性」が不妊に関係している可能性があります。具体的には、精子と頸管粘液(けいかんねんえき)の相性が悪く、頸管粘液の粘度と分泌量が原因で不妊となります。

精子と頸管粘液の相性とは

通常、妊娠するためには、精子が腟内で射精された後、精子が卵管内まで到達して卵子と出会って受精する必要があります。そして、受精までの道のりは簡単なものではありません。

腟内で射精して放出された精液中には、数千万~数億の精子が存在しています。ここから、精子は子宮内に向かっていきますが、その中で子宮内に到達することができる精子は射精直後の数パーセントといわれています。つまり、90パーセント以上の精子は、腟から子宮に到達することなく果ててしまいます。

さらに子宮に入った精子は、次に卵管内に向かいます。ここでも、卵管内に到達できる精子は、子宮内に入った精子の数パーセントになります。

そして、卵管内に到達した数少ない精子は、卵巣から放出され卵管内に入ってきた卵子と偶然出会い、精子が卵子に侵入して受精すると、やっと妊娠することになります。このときも、精子が卵管内に入るタイミングと排卵の時期が上手く合わないと受精は起こりません。

このように、精子は非常に長い道のりを経て卵子に到達することになります。その長い道のりの入り口において、精子を受け入れる役割を果たしているのが頸管粘液です。

精子と頸管粘液の相性とは、「受精までの入り口である子宮頸管を、精子が上手く通り抜けることができるかどうか」ということです。

そして、頸管粘液は女性の性周期や体調によって変化しています。例えば、サラサラしているときがあればネバネバしているときもあります。ただどのような状態であっても、精子が頸管粘液を通り抜けることができなれば、受精が起きることはありません。

こうした精子と頸管粘液の相性が悪いことによって起こる不妊は、一般的な不妊検査で発見されることができず、「夫婦ともに異常がないのに妊娠しない」ということになります。

そこで、このような精子と頸管粘液の相性を調べる検査がフーナーテスト(性交後試験:ヒューナーテスト)と呼ばれるものです。

実際の検査方法は、「セックスして12時間以内に女性の頸管粘液の中に精子がどれくらい存在しているかを調べる」という単純なものです。この検査によって、精液が頸管粘液を通過しやすい(相性が良い)かどうかを確認することができます。

不妊の問題は多くの人が悩まされているものです。その中でも、病院で検査をしても夫婦ともに「異常なし」と判断される人もいます。そうした場合は、「精子と頸管粘液の相性」に問題がある可能性が高いです。

もし不妊に悩んでいて、病院でも原因がわからないといわれた場合は、「精子と頸管粘液の相性」の問題を疑う必要があります。

冷えによる問題

そして、不妊には他にも原因があります。いくら検査しても異常なしと診断され、なぜ妊娠しないのか理由がわからない人は多いです。ただ、そもそも不妊のほとんどは原因不明であり、いくら検査しても異常なしと診断される人がほとんどです。

異常なしと診断された夫婦の多くは、女性側に排卵促進薬であるクロミッドなどの薬を処方されるだけです。しかし、これでは不妊の治療ができないのは当然だといえます。

そうした場合、女性側の冷えを取り除くことで解決することもあります。体温が低く、体が冷えている人では受精・着床が困難になっており、妊娠しにくくなっているのです。

これは男性であっても同じであり、冷えによって精子の働きが悪くなりやすいです。女性に比べて、男性では冷えに悩む人は少ないです。ただ、特に夏など冷房が完備された現代では体が冷えている男性も多いです。

ただ、睾丸(金玉)は体温よりも低めの温度を好むため、下半身については通気性の良い服を着ることで蒸れなどを防ぐ必要があります。

不妊に対する治療法「人工授精」

これら不妊に対する治療法には、さまざまな対策があります。

最も頻繁に行われるのはタイミング法と呼ばれるものです。これは、排卵のタイミングから換算して「妊娠しやすい時期」を狙ってセックスし、妊娠を促すというものです。特定のタイミングを狙うため、タイミング法という名前になっています。

男性側の精子の量や濃度、運動性、形状などが問題ない場合、タイミング法での不妊治療がメインで行われます。

ただ、精子の濃度が薄かったりED(勃起不全)などの問題でセックスできなかったりする場合、人工授精を検討します。人工授精はタイミング法の次段階として行なわれている不妊治療です。

ちなみに、精子の量が少ない場合、男性ホルモンの投与などホルモン療法を実施することがあります。無精子症など精子がほとんど存在しない場合、無精子症の治療を施したり体外受精を検討したりします。

人工授精とは

「精子の数が少ない」「ED(勃起不全)」「腟内射精ができない」といった男性機能(生殖機能)の問題で、不妊に悩んでいるカップルに行なわれる治療の1つが人工授精です。

人工授精というと、いかにも「人工的」「不自然」といったイメージをもつかもしれません。しかし実際には、人工授精は多くの人が思っているほど人工的なものではありません。

具体的な方法は、男性がマスターベーションを実施して採取した精子を子宮に注入するのみです。つまり、その後に起こる受精や着床は自然妊娠と変わりません。このように人工授精は、精子と卵子が出会うために「ちょっとしたサポート」を行うだけの治療法です。

ただ、採取された精液は検査後に洗浄・濃縮処理をされます。そうすることで精子の運動性が上がるため、より元気な精子を子宮へ注入することができます。

人工授精では子宮腔内に直接精子を注入するため、腟や子宮頸部という通過経路を飛ばして子宮内に入ります。そのため、通常であれば腟と子宮頸部で脱落する精子が子宮内へ進入することができます

このような人工授精において、男性側は射精を行うのみで、それ以上の身体的負担はありません。一方で女性にとっては、排卵誘発剤や排卵を予測するための超音波、血液、尿検査など、男性と比較すると体への負担がかかる治療法といえます。

また、人工授精は保険が使えず自費診療になるため。病院や施設によって料金が異なります。具体的には、だいたい1回で15,000~30,000円の医療機関が多いです。

人工授精の妊娠率について

人工授精というと、かなり高い確率で妊娠するイメージをもっている人が多いかもしれません。しかし実際には、人工授精によって妊娠する確率は、数回人工授精をして10~20パーセントになります。

これは、1回の人工授精による妊娠率ではなく数回行なった結果です。一般的には、人工授精は5回ほど行います。人工授精による妊娠率は5回を境として変化がなくなり、それ以上行なっても妊娠率は高くならないことが明らかになっています。

このように考えると、人工授精の妊娠率は決して高くないといえます。

人工授精には新鮮精子を利用すべき

また人工授精というと、精子を凍らせた後に解凍して利用するイメージをもっている人がいると思います。確かに、精子を凍結・融解させて人工授精を行う施設もあります。

ただ、精子を凍結させる場合は、凍結前での精子の機能が問題ない人に限ります。もともと精子が弱い場合、凍結・融解する過程において、卵子に突っ込む精子の頭部分が壊れてしまう可能性が高くなります。その結果、受精する確率が低い精子となってしまいます。

そうしたことを避けるためにも、精液検査で精子機能の低下が疑われるような人の場合、人工授精をする際には新鮮精子を利用することが重要です。

このことから、「精子は凍結して保存できるからストックしておこう」という考えは、あまりもたないようにしておくといいです。

体外受精という選択

不妊治療の選択肢として体外受精という選択肢は存在しますが、「妊娠確率が10~20パーセントとあまり高くない」「5回以上の人工授精は有効でない」「精子の凍結にはいくつかの問題がある」ことを理解した上で、人工授精という選択枝を選ぶ必要があります。

ただ、このように妊娠確率が必ずしも高くないことから、体外受精を選択する人もいます。

精子を女性の膣内へ入れる人工授精に対して、体外受精では女性の卵子を体の外へ出し、シャーレの上で精子と卵子を受精させる操作を行います。その後、卵子を女性の子宮内に戻して着床を促します。

タイミング法や人工授精をしても妊娠できない場合、体外受精へとステップアップすることがあります。

体外受精は一般的な不妊治療法

卵子を体の外に取り出す体外受精まで実施するとなると、非常に珍しい不妊治療法のように思ってしまいます。ただ、実際のところ体外受精を実施している人は非常に多いです。

日本産科婦人科学会によると、2014年に実施された体外受精の数は39万3745件であり、この結果として4万7322人の子供が生まれたことがわかっています。日本国内で生まれた子供のうち、約21人に一人は体外受精です。

このように考えると、体外受精を実施する人は非常に多く一般的に行われている不妊治療法だといえます。

体外受精の流れ

体外受精をするとき、どのような流れになるのでしょうか。この流れは、主に以下のようになります。

・排卵誘発

まずは卵子を育てます。このときはさまざまな方法があり、内服薬や注射薬などを活用していくつもの卵子を育てるようにします。

ただ、何度も複数の卵子を育てるとなると体に負担をかけることがあるため、自然排卵による卵子を活用する方法もあります。

その後、女性の卵巣に針を刺して卵子を採取します。このときは同時に男性側の精子も取ります。

・受精

卵子と精子を受精させるときについても、いくつか方法が存在します。ただ、最もメインとなる手法としては、精子の濃度を調節した後に卵子へと振りかける方法があります。

また、顕微授精法(ICSI)と呼ばれ、「元気な精子を選んだあと、卵子に非常に細い針を刺して精子と卵子と受精させる」という方法もあります。運動精子が非常に少なく、男性不妊症の人の精子を活用する場合は顕微授精法を用います。

・胚移植

受精した後、卵子を子宮内に戻さなければいけません。受精した卵子を胚(はい)といいますが、着床できる状態の胚にするため、体外で4~6日間ほど育てます。

いくつか細胞分裂し、胚盤胞と呼ばれる状態にまでなった胚を子宮内へ移植します。子宮へ戻った卵子は子宮内膜で着床し、妊娠が成立します。

その後は自然妊娠と同じ経過をたどります。

体外受精で認識すべき異常受精

体外受精をするとき、受精卵のうち数パーセントの割合で異常受精が起こります。異常受精では染色体異常が起こっており、これを子宮に戻すことはしません。

異常受精を生じる主な理由としては、精子を振りかけたときに周りに非常に多くの精子が存在しているため、通常であれば受精卵一つに対して精子が一つ入るところ、二つや三つなどいくつもの精子が卵子へ入ってしまうために起こります。

卵子と精子が受精すると他の精子が入れないようにブロックされますが、このときのブロックが間に合わなかったり、ブロック機能が弱かったりして異常受精になります。こうした現象を多精子受精といいます。

また、卵子の質が悪い場合でも異常受精になります。良質の卵子が育っていなかった場合、異常受精を生じてしまうのです。

ただ、前述の通り染色体異常の胚を子宮に戻す医療機関は存在しないため、少なくとも染色体異常の子供が生まれるのは防ぐことができます。

このように、不妊治療ではさまざまな方法があります。ただ、不妊の原因は女性側だけでなく、日本の不妊の約半数は男性側の問題で起こることを認識しなければいけません。

タイミング法以外にも人工授精や体外受精などが存在するため、あなたに合った正しい治療法を選択することで、妊娠できる可能性が高くなります。