男性にとって、セックスのときに勃たなくなるED(勃起不全:インポテンツ)は非常に大きな問題です。若いときは問題なかったとしても、中高年になってEDになってしまうのです。

勃起不全ではない人の大半は、「EDで悩んでいる人はそこまで多くない」と考えています。しかし、日本でEDに悩んでいる人はかなりたくさんいます。そのような現状を知らずに生活していると、あなた自身がEDになったときにひどく悩むことになります。

そこで今回は、日本におけるED・インポテンツの現状や原因について述べます。

ED(勃起不全・インポテンツ)とは

EDとはErectile Dysfunctionの略であり、勃起機能の低下を意味します。今でこそEDという言葉は定着していますが、それ以前は「インポテンス」と呼ばれていました。

しかしインポテンスには「不能」という意味合いが含まれており、人格を否定することになると考えられたため差別用語として、使用されないようになりました。そして、1992年よりEDという言葉が一般的に用いられることになりました。

また多くの人は、EDという用語は「全く勃起しない人」のことを指すと考えていますが、実際にはそうではありません。

専門的には、「性交時に十分に勃起せずに満足な性交が行えない状態」をEDといいます。そのため、「勃起はするが硬さが充分ではない」「性交に勃起状態を維持できない」というような人もEDといえます。例えば、セックス中に中折れしてしまう人はEDです。

また、以下のような人も勃起不全の治療対象になります。

・たまに勃起しないことがある

・勃起するか不安になることがある

このように、本人が自分自身の性器における勃起に対して不満を感じている場合も、EDとして治療する必要があります。

つまり、重要なことは「満足できるような性交が行えるかどうか」ということです。そのためEDは、多くの人が考えているような「全く勃起しない人」だけではなく、思っているより軽症の人も含んでいます。

まずは、このような事実を認識しておくことが大切です。

日本におけるEDの現状

日本における疫学調査によると、31~79歳の男性のうち、EDに悩む人は1130万人にもなると報告されています。

またこの中には、先ほど述べたような「たまに勃起しないことがある」といった軽度のEDに悩む人は含まれていません。そうであるにも関らず、31歳以上の6人に1人はED患者であるということが明らかになっています。

さらに、高齢になればなるほどEDになる確率は高くなります。実際に日本人の50~60代男性は、2人に1人がEDだといわれています。つまりEDは、誰でもなる可能性がある病気です。

そして、年齢を重ねると「誰でも勃起機能が低下するのが当たり前」だと考えられています。しかし、EDをそのように当然のこととして捉えるのは問題です。それは、勃起はその人の健康状態を表しているものだといえるからです。

例えば、いわゆる「朝立ち」と呼ばれる早朝勃起は血液循環の状態を表しています。勃起とは、性器への血流量が増した状態です。そのため、朝立ちが毎日あるような人は全身の血液の流れが良好であるといえます。

勃起は身体の健康を示すバロメーターである

もし数週間も早朝勃起が起こらないような状態は、全身の血液循環が滞っているといえます。

全身の血液循環は、体の健康を表すバロメーターです。つまり早朝勃起が起こらない人は、体に何かしらの健康上の問題が生じていると疑う必要があるいえます。

たとえ何歳になっても勃起をするということは、体の血液循環が良好で体が健康な証拠です。70歳を超えても、元気な人は勃起します。そのため、EDを「歳のせいだから仕方ない」と考えないようにすることが大切です。

勃起が起こるメカニズム

年をとると性機能が衰えやすくなるのは確かです。しかしEDになった場合、全てが歳のせいではなく、年齢の問題以外に何かしら健康に問題が生じている可能性があると疑うことが大切です。

それでは、どのようにして勃起が起こるのでしょうか。勃起不全のメカニズムを知るためには、どのようにして勃起を生じるのかを知る必要があります。

勃起を生じるステップ

健康な人は、早朝や性的興奮時に勃起します。一方でEDの人は、そのような早朝勃起(朝立ち)やセックス時の勃起が起こりにくくなります。

健康な勃起は、主に3つの過程をたどることで生じます。どのような場面でも、以下に示す3つのステップを問題なく踏むことで勃起が起こります。つまり、この3つの過程のどこかに障害が生じると、EDになります。

勃起が起こる3ステップは、以下のようになります。

「脳」が刺激を受ける

性的刺激に関わらず体の外部で起こったことは、視覚と聴覚、味覚、嗅覚、触覚の五感を通して、脳の感覚を受け取る「感覚野」と呼ばれる場所に情報が届けられます。その後に脳の「前頭葉」を介し、「大脳辺縁系」と「視床下部」に送られます。

大脳辺縁系は脳の深部に位置するもので、感情や情動に深く関係している場所です。一方で視床下部は、自律神経系を調整する司令塔です。

自律神経系とは、意識の有無とは無関係に体の動きを支配する神経のことをいいます。例えば、心臓や血管、内臓などの運動は私たちの意思とは関係なく起こっています。自律神経の働きがあるため、人間は寝ているときでも生命を維持できますし、温度や気圧が変わるなど急な環境の変化にも対応できます。

そのような自律神経の司令塔である視床下部は、人間の本能に関係しており、性欲や食欲といったものと深い関わりがあります

したがって人が性的刺激を受けると、その刺激が大脳辺縁系と視床下部に伝わります。その結果、この2つの部位で性的興奮が作られることになります。性的興奮は電気的信号となり、脳から「脊髄」を介して体の末端に情報を届けます。

神経が刺激を伝達する

勃起を引き起こす司令塔である「勃起中枢」は、脊髄の中でも最も下端部にある「仙髄(せんずい)」と呼ばれる部位にあります。このように脳で作られた性的興奮は、脳から仙髄に送られた後、ペニスを支配している神経に伝えられます。

ペニスには「海綿体(かいめんたい)」と呼ばれる、3つのスポンジ状の勃起性組織があります。

1つは、「尿道海綿体」と呼ばれる尿と精液が流れる通路です。そして残りの2つは「陰茎海綿体」といわれるものであり、この2つの組織が勃起に直接関係します。先ほど仙髄から出た神経は、この陰茎海綿体を支配する神経に伝えられます。

血液が血管を通り、ペニスへ流れる

陰茎海綿体を支配する神経に性的興奮の刺激が伝わると、海綿体にある血管を拡張するような反応が引き起こされます。その結果、陰茎海綿体が膨らみます。しかしそれに対して、陰茎海綿体を覆っている膜様の組織がその膨張を外から圧迫するため、海綿体から出ていこうとする血液がうっ血します

うっ血とは、ホースから勢いよく水を出しているときに出口を指で塞いだときに起こるような状態です。そのような状態では、水がホースを押し広げようとする方向に働くことでホースはパンパンになります。

勃起が起こっているペニスはまさにホースがパンパンになった状態になっており、血液が過剰に流入することでこのような状態になっています。

ED(勃起不全)を引き起こす4つの原因

このように、勃起が正常に生じるには3つのステップを踏む必要があります。この過程のどこかに問題が起こると、EDとなる可能性があるといえます。まずは、勃起には脳や神経、血管といったように、さまざまな体の機能が関係しているのです。

脳・脊髄を含め、「勃起のメカニズムに関する部分」のどの箇所であっても、問題があれば勃起不全を生じるのです。

このとき、勃起が起こる過程に障害を引き起こす原因は主に以下の4つだとされています。

器質性ED

器質性EDとは、何かしらの病気が原因でEDとなるものです。

例えば、動脈硬化が原因で発症するEDが代表的なものとして挙げられます。勃起は、ペニスに血液が多量に流れることで起こります。そのため、血管に障害があり、十分な血液が流れなくなると勃起しなくなります。

動脈硬化が起こる原因には、以下のようなものが挙げられます。

・加齢

・脂質異常症(高脂血症)

・高血圧

・糖尿病

このように、加齢や生活習慣の影響で動脈が硬くなり、血管が広がりにくくなることで勃起が起こらなくなります。生活習慣が原因で動脈硬化が起きたら、EDになりやすいのです。

また糖尿病などでは、神経に障害が起こります。そうなると、ペニスの血管に対する情報が伝わりにくくなるため、勃起が起こりにくくなります。

他にも以下のような病気で、EDが起こるといわれています。

・脳出血

・脳腫瘍

・脊髄損傷

・パーキンソン病

・アルツハイマー病

以上のように、何かしらの病気が原因で起こる勃起障害を器質性EDといいます。

心因性ED

心因性EDとは、何かしらのストレスが原因でEDとなるものです。

これは仕事のストレスや家庭でのストレスなど、原因は人それぞれです。たまたま、一度上手くいかなかったセックスがきっかけで心因性EDになる人もいます。

例えばエッチの途中で中折れしてしまい、最後までセックスできなかったとします。このときの体験によって「次もうまく勃起しなかったらどうしよう」「再び中折れしてしまうのでは」という不安からストレスを受け、心因性EDを生じてしまいます。

精神的なストレスは勃起を引き起こす指令を生み出す脳に影響を与えます。その結果、脳で性的興奮の情報が形成されなくなり勃起障害を引き起こします。

混合性ED

混合性EDは、動脈硬化などの基質的問題に精神的ストレスが加わることで生じるEDです。つまり、先ほどの器質性EDと心因性EDが組み合わさった形になります。

50~60代の人は動脈硬化も起こりやすく、仕事上もストレスを受けやすい時期です。そのため、動脈硬化などの「器質的な問題に仕事で生まれた心理的な負担」が加わることでEDを発症しやすくなります。

複数の要因が重なって勃起不全を引き起こしているため、混合性ではEDの治療がより困難になりまう。

薬剤性ED

EDは、薬の副作用によっても起こります。EDを発症させる可能性のある薬剤には、以下のようなものが代表例として挙げられます。

・利尿剤(サイアザイド系利尿剤)

・降圧剤(末梢神経交感神経抑制剤)

・抗うつ剤(三環系抗うつ薬)

・抗精神病薬(フェノチアジン系抗精神病薬)

・睡眠剤(ハルビツール系睡眠剤)

このように、薬の影響によって生じるEDを薬剤性EDといいます。特定の病気をもっておらず、また精神的なストレスがないにも関わらず勃ちが悪い場合、それは薬の副作用によるものかもしれません。

このように、EDを引き起こす原因は主に4つあります。EDで悩んでいる人は、まずは以上に挙げた4つのうち、自分がどれに当てはまるのかを考えることが大切です。すべてに共通することですが、病気の治療には原因を知ることが必須になります。

勃起が起こるメカニズムを知り、インポテンツに陥る理由が分かれば、どのようにして勃起不全を解消すればいいのか分かるようになります。そこから、EDへの対策を練っていくのです。