中高年男性における男性機能の問題として、「ED(勃起不全)」はとても多い悩みです。そして、EDになったほとんどの人は、「加齢によるものだから仕方がない」と諦めます。

しかし70代になっても勃起可能な人もいます。その一方で、30代からEDに悩んでいる人も少なくありません。そのようなことを考えると、EDを加齢だけのせいにするのは問題です。

そして勃起不全の主な原因は「ペニスへの血行不良」によるものだと考えられています。また、ペニスの血流障害は、脳や心臓などの大きな血管に問題が生じる前兆だといえます。そのためED(勃起不全)は、単なる男性機能だけの問題ではないといえます。

そこで今回は、40代・50代の中高年男性に生じるED(勃起不全)と脳梗塞、心筋梗塞、糖尿病、精索静脈瘤といったその他の病気との関係性について述べます。

血流不足とED(勃起不全)の関係性

ED(勃起不全)について考える前に、まずは正常な勃起が起こるメカニズムについて考える必要があります。それはED(勃起不全)が、勃起が生じる過程に問題があるために発症するものだからです。

正常な勃起は、まずは脳に性的な刺激が入ることから始まります。その情報は、視覚や聴覚といったようにさまざまな感覚から得られます。

そして、脳はこのような情報を性的興奮という指令に変えて、脊髄(せきずい)を介して「勃起中枢」と呼ばれる場所に伝えます。勃起中枢は、ちょうど背骨における腰の高さにあり、脳からの指令をペニスの血管に送ります。

脳から送られた性的興奮の指令は、ペニスにある血管を拡張します。血管が広がる結果、多量の血液がペニスに流れ込み、ペニスが「うっ血」します。

うっ血とは、通常以上に血液が多く流れ込んでおり、血管がパンパンに腫れた状態を指します。このようにペニスの血管でうっ血が起こると、血圧が上昇して勃起することになります。

つまり、勃起が生じる過程は、以下のようになります。

① 性的刺激を脳が受ける

② 性的刺激が脳で指令に変換される

③ 指令が脊髄における腰の高さにある「勃起中枢」に伝えられる

④ 勃起中枢から神経を介して、ペニスの血管へ拡張する指令が伝わる

⑤ ペニスに大量の血液が流れて「うっ血する」

⑥ ペニスの血圧が上昇して勃起する

ペニスに血液が大量に流れ込まなければ勃起は起こらないといえます。当然、血流不足になると、勃起しなくなるためED(勃起不全)となります。

ED(勃起不全)とその他の病気との関係性

40代・50代の中高年男性では、ED(勃起不全)も大きな悩みの一つですが、その他の病気を発症しやすい年代でもあります。そして、そのような疾患の多くは脳梗塞や心筋梗塞といったような血管に関係しているものです

実は、このような心筋梗塞や脳梗塞といったような病気とED(勃起不全)には、深い関係性があります。

ED(勃起不全)と心筋梗塞や脳梗塞などは、血流障害が起こるという点で共通しています。これらの違いは、血流不足となる血管の太さにあります。具体的には、ペニスにある血管は直径が1~2ミリであるのに対して、心臓は3~4ミリ、脳は5~6ミリになります。

そして排水パイプと同じように、血管が詰まって血流障害を起こしやすいのはより細い血管です。つまり、心臓や脳の血管より先に、ペニスの血管に障害が起こって血流が不足する可能性が高いといえます。

また、このような血流障害は高血圧などによる「動脈硬化」によって起こりますが、動脈硬化は全身で同時に生じていることがほとんどです。

そのため、ペニスへの血流不足で勃起障害が起こっている人は、心臓や脳の血管も動脈が硬化している可能性が高いといえます。そうなると、ペニスの血管に問題が生じた後は、心臓や脳の血管が詰まりやすくなると予測されます。

つまり、ED(勃起不全)は心筋梗塞や脳梗塞の前兆だと考えることができます。40代・50代で「勃たない! インポテンツだ」と悩んでいる人は、心臓や脳の血管の動脈硬化が進行しているかもしれないのです。

ED(勃起不全)と糖尿病の関係性

また、EDは糖尿病とも関係があります。

糖尿病とは、血糖コントロールができなくなり、血糖値(血液中に含まれる糖分)が高くなる病気です。その結果、尿中にも糖分が入ってしまうため糖尿病といわれます。

ほとんどの人は、糖尿病といえば「尿中に糖分が含まれる病気」というイメージが強いかもしれません。実際に糖尿病の人は、尿の中に糖分が多く入っているのですが、それはある問題の結果として出ている症状です。糖尿病における本当の怖さは血糖値の変動にあります。

糖尿病になると、健康な人では考えられないほど血糖値が上昇します。そして急激に血糖値が上がると、血管の内側はその刺激(高すぎる血糖値)によって傷ついてしまいます。

血管が傷つくと、その傷を治そうとして、さまざまな反応が起こります。具体的には、白血球などの細胞が傷の部分に集まって傷口を防ごうとします。その結果、動脈が硬化してくるため、いわゆる「動脈硬化」になります。つまり、糖尿病では「血管が障害を受ける」と考えてください。

動脈硬化になると、当然ながら血流が悪くなります。また、神経は血液不足にとても弱い組織です。そのため、結果的に血管の問題だけでなく神経にも影響が出てくるといえます。

ペニスへの血流障害によって、勃起不全が起こります。そのため、糖尿病によって「チンコの血管や神経が傷つけられる」ようになると、結果として勃たなくなるのです。

ED(勃起不全)と糖尿病というと、両方ともに40代や50代の中高年男性がかかりやすい病気ですが、以上のような関係性があるということを理解しておいてください。

男性機能(生殖機能)の低下につながる精索静脈瘤

ただ、生活習慣に問題がない人の中にも、精力が低下する人もいます。そのようなケースでは、まずは何かしらの病気があることを疑うことが大切です。

高血圧や糖尿病などの病気がなかったとしても、男性機能(生殖機能)に大きな影響を与える病気の代表的なものに「精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)」があります。

精索静脈瘤は自覚症状なく発症するため、気づかないうちに精力の低下を起こす可能性がある怖い病気です。そのため、勃起不全の人が精索静脈瘤について知っておくことはとても大切だといえます。

精索静脈瘤とは

精索静脈瘤とは、精巣につながる静脈に「静脈瘤」と呼ばれる静脈の膨らみができてしまう病気です。静脈瘤というと、足に現れるものが有名ですが、精巣につながる静脈にできたものが精索静脈瘤になります。

通常、血液は動脈と呼ばれる血管によって心臓から、筋肉や内臓などそれぞれの組織に栄養豊富な状態で送られます。各組織に栄養を送った後は、静脈を通って再び心臓に血液が戻ります。

そして、動脈を通って精巣に送り出された血液は、最初に腎静脈(腎臓から出る静脈)へ流入します。

本来であれば静脈には弁がついているため、血液が逆流することはありません。しかし、何らかの原因で弁の機能が悪くなってしまうと、弁が逆流を防ぐことができずに血液が逆流してしまいます。

このような弁の機能不全が腎静脈で生じると、精巣から腎静脈に一度流入した血液が、再び精巣に向かって逆流してしまいます。その結果、精巣の静脈に過剰な血液が入り込んでしまい、血管に対する圧力が強くなるため、血管が膨れて静脈瘤ができます。

ただ精索静脈瘤は珍しい病気ではありません。一般的に「男性の10~20パーセントには精索静脈瘤がある」といわれています。しかし、自覚症状が少ないことや、精液検査だけでは原因を突き止めることができないため、気づかないままの状態の人は少なくありません。

この場合、男性不妊外来を受診することで、やっと精索静脈瘤が見つかります。また、「男性不妊外来を受診する男性の30~40パーセントに精索静脈瘤が見つかる」といわれています。

また、精索静脈瘤は、精巣への血液量を増やして精巣の温度を上昇させる原因になります。精巣は高温環境に弱く、精巣の温度が2~3℃上昇すると造精機能は大きく低下します。つまり、精巣を温めると作られる精子が減ってしまうといえます。

このように、精索静脈瘤は誰にでも生じる可能性がある病気です。そして自覚症状がないため、この病気を自覚している人は多くありません。しかし、男性機能(生殖機能)を悪くする怖い病気ですので、ぜひ基本的なことだけでも理解しておくようにしてください。

以下に精索静脈瘤の自己チェック法を記します。

・陰嚢(いんのう)の大きさや感触に左右差がある

・長時間座っていると陰嚢が痛む

・足を組みかえるときに痛みがある

以上のような自覚症状がある人は、精索静脈瘤の可能性があるため、早めに病院で検査を行うようにしてください。40代や50代で「高血圧や糖尿病などの生活習慣病でないにも関わらず勃ちが悪い」と考えていたら、精索静脈瘤である可能性もあるのです。

精索静脈瘤の治療について

精索静脈瘤の治療法は、基本的には手術によって静脈瘤を除去することになります。その中でも最も多い手術方法が「低位結紮術(ていいけっさつじゅつ)」と呼ばれるもので、股関節部からメスを入れて切開し、精巣にできた静脈瘤を結んで切断します。

低位結紮術では、精巣に関係する精管や精管動静脈、精巣動脈、リンパ管などは全て温存します。結紮(けっさつ:血管を縛って血行を止めること)は、数本ある精巣動静脈の周囲にある細い静脈を使って行います。

低位結紮術は、鼠径管(そけいかん)と呼ばれる組織よりも下の位置で切断して結紮するため、「低位」といいます。逆に、鼠径部より上位で同じような結紮術を行う場合は、「高位結紮術」といいます。

これらの手術は基本的に腹腔鏡によって行うため、手術による傷はほとんど残りません。腹腔鏡はお腹などの体表面から入れるための内視鏡であり、傷口は0.6~2.0cmと非常に小さいです。

また、結紮術は1時間程度の短い手術であるため、日帰りすることも可能です。しかし、いくら簡単な手術といっても麻酔を使って行う手術であることには変わりありません。そのため、2日程度は入院して、術後の経過を確認してから退院したほうが良いでしょう。

このように、精索静脈瘤は男性機能(生殖機能)の低下を引き起こす病気の1つです。そして自覚症状が少ないため、多くの人が気づかずに生活しています。精索静脈瘤に早く気づくためにも、普段から「陰嚢の大きさや感触」「陰嚢の痛み」には、十分注意して生活するようにしてください。

ただ、そうはいっても40代・50代の中高年男性で多い勃起障害の原因は、ほとんど生活習慣病にあります。高血圧による動脈硬化で脳梗塞や心筋梗塞が起こりやすくなりますし、糖尿病によって血管や神経が傷つけられてしまいます。その結果、EDに陥ってしまいます。